29日の区議会本会議での質問項目の締切日だった。一応、どういう内容を質問するかを通告することになっている。29日の午後1時から折笠区議が質問をする。
区議会質問とは直接関係がないが、前衛12月号に掲載された唐鎌直義(元専修大学教授)さんの「被災地をナショナルミニマム保障の先進地域に」を読み、これからの新しい社会のあり方の展望を見出すことができると思ったので、紹介したい。長いけれど。
「私が考え着いたことは、被災地を「ナショナルミニマム」保障を完全に実現した北欧型福祉国家のモデルにするという案です。東北の復興は、約30兆円あればできると言われています。このお金は、労働者が生み出した剰余価値を約250兆円も貯めこんだ大企業の内部留保の約1割で賄えます。
大企業が貯め込んで運用に回しているお金の一部を「内部留保税」として徴収するのです。ある財政学の先生から聞いた話によれば、「内部留保税」は戦後日本で一度実施されたことがあるそうです。奇想天外な新しい税制ということではないので、これを実現することは不可能ではないように思われます。足りない分を国庫負担で補うことにすれば、消費税率10%への引上げはすぐに廃案になるでしょう。
被災者の方々の多くは肉親を亡くしています。もうすでにおそらく2万人を超えるであろう方々が亡くなられています。東北3県の方々はこういう目茶苦茶な被害をこうむったのだから、元に戻すという意味での復元だけでは、心身の打撃は回復されないでしょう。東北3県がこれだけ復興したのだということを示すには、今までよりもよい社会にしてあげないと、犠牲になられた方々が浮かばないと思います。また国に対してそれだけの要求を行う権利が、今の東北の人々にはあると思います。
第1に、地震と津波で家を失った方が大勢います。いまこそ住宅保障政策をスタートさせるべきです。応急的に仮設住宅が建設されていますが、わずか数年しか居住できない仮設住宅ではだめです。住宅としての水準をきちんとクリアした立派な公営住宅を公費で高台に建設することです。もしそれで足らなければ、民間借家に対する家賃補助制度も開始すべきです。
第2に、新しい教育保障制度の導入です。お父さんやお母さんを亡くしたために、進学をあきらめる子供が一人もでないようにすべきです。もちろん高校も大学も東北3県の出身者は完全無償にしてあげるべきだと思います。奨学金も給付制にして、人生のスタート地点で借金を負ったりしないようにします。
第3に、無料の医療の実施です。医療の窓口負担を東北3県のすべての人に対して無料にする。介護サービスも利用料を無料にするということです。
第4に、今よりも手厚い失業補償制度にすることです。テレビを見ていると、被災者のほとんどが働きたいと言っています。しかし、それは手持ち金がなくなって、生活費が底をつき始めているからです。要するに、食べていかれない不安があるから、働いて収入を得たいと考えているのです。東北3県の人に限って、失業手当の支給を一律2年間に延長します。
この程度の給付期間は、EU加盟国に比べると、まだ短い方です。オランダでは一律30か月、デンマークでは一律4年、ベルギーでは無期限ですから。わずか3か月しかもらえない失業手当なんて「日本の常識=世界の非常識」以外の何物でもありません。
第5に、生活保護の適用拡大です。これは厚労省が戦々恐々としていることで、被災地での受給者の急増を非常に警戒しています。何と早々と「被災地で不正受給が出ないように、保護の適用を厳格にするように」という通知をだしました。どさくさにまぎれて生活保護を受ける輩がいるということです。ひどいですね。これは新聞報道で知ったことですが、被災地では日赤の義援金や東電の賠償金が出た段階で保護を停止することになったそうです。その結果、受給者が4百人から2百人に半減した町も出ました。賠償金が日常生活費に充当されては、賠償の意味がないのではありませんか。
第6に、公共料金を引き下げる案です。少なくとも電気代は3分の1に。原発のせいで避難を余儀なくされているのですから、本当はタダにすべきでしょうが。
それから自然エネルギーにもとづいて社会的インフラを整備する。就業人口の20%を公務員にしていく。これで一気に正規雇用が増え、自治体の税収も上がります。
こんなふうに東北を再興すると、きっと多くの国民が東北に移住したくなるでしょう。東北が新たな繁栄の拠点になる。そうなってこそ、本当の意味での東北復興です。
敗戦のがれきのなかから日本が復興できたのは、日本人の粘り強さや勤勉のせいではありません。平和憲法の制定や労働基準法の施行に象徴される戦後民主主義の抬頭に、国民が新たな希望を持つことができたからです。
震災のがれきのなかから東北を復興させられるのは、今までの社会のあり方とは明確に異なる、新たな希望の創出だと思います。今までとは違う路線を敷設することです。それはたんなる復元ではなくて、プラスの復興です。そうすることで沢山の死者への鎮魂もかなうのではないでしょうか。多くの人々の死を無にしてはいけないという思いの先に、私のプランがあります。」